日本経済の未来を考える

2018年8月31日 at 4:56 PM

<2018年8月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

1990年頃、私はアメリカの大学に留学していて、毎年夏休みには数ヶ月間アルバイトをするために日本に帰ってきていた。工事現場の警備員のアルバイトで日給12,000円程もらっていた。朝から夜の残業まですると、2万円近い時もあった。夏休みだけで40万円近い額を貯めることができていて、アメリカに戻った時の生活費の足しにしていたことをよく覚えている。
あの頃から30年近く経った今、大学生が夏休みのアルバイトで同じだけの日給を稼ぐのは難しいのではないだろうか。30年経っても、全く賃金が上がっていない(むしろ下がっている)というのは、先進国では異常な事態と言えるだろう。

こうした状況は、1997年をピークに20年以上もマイナス傾向が続く実質賃金(物価の影響を除いた賃金)の統計数値を見ても明らかである。この数値だけを見れば、日本の貧困化が進行しているとも表現できるかもしれない。

だが一方で、日本の自動車メーカーは世界で伸び続け、電機メーカーのソニーやパナソニックも家電・半導体・スマホなどの売上低迷から一時期は業績を大幅に落としていたが、今や過去最高の業績を上げている。
その他にも、あまり表立って名前は聞かないかもしれないが、多くの電機産業の企業が最高益を出している。
その背景には、アメリカ・中国・韓国・台湾・ヨーロッパのデジタル分野の産業において、国際分業体制の一部として、日本はデジタル機器の素材、周辺技術や基盤技術の分野で他国では真似ができない技術を作り上げ、オンリーワンのポジションを作り上げてきたことがある。

上場企業の収益を見ると、2018年3月期決算で純利益約29兆円、対GDP比率11. 9%と、バブル期を超える数値となっている。
安定成長期終焉後の低迷期を指して“失われた20年”と言うが、この20年は日本企業がビジネスモデルを転換するために必要な時間だったとは考えられないだろうか。そして、その一つの結果として、日本企業がデジタル分野での国際分業の中における新しいビジネスモデルの構築に成功したということではないだろうか。

人口減、国内市場の縮小、ガラパゴス経済など色々と言われている日本であるが、世界の国土面積の0.25%、人口の割合は1.7%程でありながら、国際分業の中でオンリーワンの分野を確立できていると考えれば、真に明るい未来を想像することもできると思う。

日本経済の未来を悲観する必要がないとなれば、自らの事業をもっと発展させていくためのエネルギーもわいてくる。事業の未来と時流を見極めながら、さらに奮闘していきたいと思っている。