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ベトナム ホーチミンを訪問

2017年12月20日 at 5:25 PM

<2017年12月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

ベトナムの主要都市ホーチミンを訪問してきた。
7年ほど前にハノイを訪れたときには、地域性の違いもあると思うが、かなり発展しているという印象をもった。そして一方で、経済はしっかり発展しながらも、慢性的な貿易赤字からインフレ率が10%近くもあり、多くの国民は苦しんでいるようにも見えた。現在、ベトナムの経済成長率は5~6%と少し鈍化しており、インフレ率は2%程と落ち着いている。失業率は2.3%程。生活レベルはかなり向上してきていると思う。今回のホーチミン訪問の目的は、
ベトナム人実習生について知ることであり、今後の賃金傾向が気になっていた。

なぜ、こうしたことが気になったかというと、最近、中国人実習生が働き先から失踪するという話をよく耳にしていたからである。失踪の理由は単純で、中国国内の賃金が上昇し、日本で働く意味がなくなったために、何かのきっかけで失踪しているのだろう。ベトナムの賃金傾向について聞いてみると、インフレ率が下がってきたことで、大幅な賃金上昇の要求(スト含む)などは減ってきているということだった。統計データを見ても、経済成長率並の賃金上昇率なので、賃金上昇率の傾向としては下がってきていると考えて良いと思う。

現在、人口ピラミッドは25~29歳の割合が最も高く、労働人口はしばらく十分なほどの供給量があるだろう。しかし、0~14歳までの子どもは徐々に減り続けており、高齢化社会を迎え、今後、高齢者比率がさらに拡大する見込みであることを鑑みると、これからさらなる大きな経済発展があるとは思えない。中国のように毎年8%以上の経済成長を実現し、国が率先して賃金向上の取り組みを行ない、賃金が大幅に上がるといった現象がベトナムで起こる可能性は低いだろう。ベトナム国内の賃金が上昇し、日本国内のベトナム人実習生が失踪するというリスクは、ほとんどないと考えて良いと思っている。
様々な話を聞いて思うのは、実習生を受け入れる企業は増えてきているようだが、重要なのは、“企業側がどのような姿勢で受け入れるか”ということである。人生を賭けて来日する実習生を、単なる労働者という観点で受け入れるのではなく、“その実習生の人生を、責任を持って預かる”くらいの覚悟を持つべきだと思う。

万が一、ベトナム国内の賃金が上がり、日本で働く意味がなくなることがあっても、契約の3年間は、スキルを上げるための教育をし、給与を上げてでも本人たちが納得して働く環境を作るべきだと考える。
ベトナム人実習生には、賃金が上がって日本から失踪するというリスクはほとんどないかもしれないが、そのくらいの責任と覚悟を持って受け入れるべきだと感じている。

賃金の対価について考える

2017年10月23日 at 7:09 PM

<2017年10月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

 トヨタ自動車は入社10年目以降の社員を対象に、実際の残業時間に関係なく、
 毎月17万円を残業手当として一律に支給する制度を導入することを決めました。
 これは、主任職の平均で残業手当45時間分にあたり、残業を少なくすればする
 ほどメリットがある仕組みです。残業が45時間を超えた場合、手当は上乗せされます。

先日、トヨタ自動車が残業代保証新制度を導入するという上記ニュースが出ていた。
毎月一律17万円という残業手当の金額にまず驚いたが、この制度導入の根底には、実際に発生しているであろう残業時間分の手当ては最初から出すから、時間という概念ではなく、成果に対する対価としての賃金という考えを持って働いてほしいという意味があるのであろう。実際に働く時間が45時間を下回っても17万円を出すということは、そういうことだと思う。
日本では、賃金とは労働時間に対する対価という考えが未だに強いが、私は、成果に対する対価を支払うというトヨタ自動車の制度は素晴らしいと思う。そして、この制度は、もしかすると、日本のホワイトカラーの生産性が先進国の中で突出して低い現状を改善していくための取り組みの一つなのかもしれないとも感じている。
現在、日本の物価や賃金は、先進国の中ではかなり低い。ヨーロッパやアメリカ、シンガポール、オーストラリア等に行くと、日本の物価は非常に安いと感じるし、賃金も極めて低く抑えられている。賃金の低さについては、日本の実質賃金が過去20年ほとんど変わっていないという事実が物語っているし、ワーキングプアという言葉が生まれる程である。

しかし、ここにきて転換期を迎えているような気がしている。今後、賃金は上昇する方向になってきていると思う。過去最高の失業率の低さや、求人倍率の高さも、その片鱗の一つなのではないだろうか。そして、今後、一部の勝ち組と大多数の負け組にはっきり分かれる格差社会に突入していくと、勝ち組がほしがる人材には、世界基準の高い賃金が支払われるようになるため、内需産業といえども、一部の勝ち組がほしがる人材の賃金はさらに大幅に伸びていくことになると思う。
我々の塗装業界でも、このような考え方をいち早く持ち、他社より先手で取り組みを行なっていかなければ、今後、良い人材を獲得することはできなくなるであろう。良い人材が獲得できないということは、会社の成長が止まることと同義である。

良い人材を獲得するためには、収益をしっかり出し、魅力のある会社にしなければならない。そのためにやるべきことは沢山あるが、これからの時代を生き抜くために他に選択肢があるとも思えない。

未来への危機感

2017年9月27日 at 4:41 PM

<2017年9月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

フィンテック、仮想通貨、ビットコイン、ブロックチェーンといった言葉が、ニュースや雑誌などを賑わせている。輸入や海外送金などに関わるビジネスをしていると、通貨の交換手数料や送金手数料などが大幅に削減されるビットコインを代表とする仮想通貨の普及には、物凄くメリットがある。為替変動リスクが無くなれば、当社のビジネスに格段の安定性がもたらされるため、私も仮想通貨には多少なりとも興味を持っていた。

仮想通貨の普及が、経済や社会に及ぼすインパクトは物凄いと思う。仮想通貨が普及するということは、中央銀行のような通貨発行機関が必要なくなることを意味する。通貨発行権を有する中央銀行を支配するために、これまで歴史のなかで何度も戦争が起こるほど、通貨発行権は権力の中心となってきた。そう考えると、国として最も大切な機能を消滅させる程のインパクトが仮想通貨にあるということが、過言ではないと分かるのではないだろうか。

仮想通貨の誕生の背景には、ブロックチェーンという新しいIT技術がある。ブロックチェーンとは、「取引の履歴を塊(ブロック)にして、その塊を鎖(チェーン)のように繋げていく仕組みであり、過去の取引履歴が一目瞭然となる帳簿のようなもの」と、何とも理解しにくいものだ。しかし、その仕組みを知っていようと知っていまいと、社会の水面下では、確実にこのブロックチェーンによる大きな変革が進み始めている。仮想通貨はブロックチェーンの技術を活用した一つの動きで、ブロックチェーンには、過去にインターネットがあらゆる経済を変革させてきた以上の激しい社会変革を起こすほどの潜在的インパクトがあるようだ。

仮想通貨だけでも、クレジットカード会社を消滅させ、銀行の決済業務を奪い取り、大量の銀行員のリストラを生み、日本銀行の通貨発行権や国の金融政策さえ無効にしてしまうだけのインパクトがある。そして、その余波は様々な産業にも確実に広がっていくだろう。もちろん、我々の塗料・塗装業界も無縁である訳はない。

とはいえ、今から何らかの対策を準備したいと思っても、何をして良いかわからない。できることといえば、商品やサービス向上のために努力し、経営者自らも成長し、社員教育などを今まで以上にしっかり行なうといった基本的なことで、それ以外は何も思いつかない。
予測できない未来について考えることに大きなストレスを感じるが、この危機感を持つ経営者と持たない経営者では、少しずつ見えてくる未来への対応スピードは変わってくるであろう。未来に対する危機感こそが、今の私の経営のモチベーションになっている。