社長の決裁について考える

2020年8月31日 at 3:30 PM

<2020年8月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

 

「Amazonが高度人材を350 0人採用 」というニュース記事を見た。その内容は、オフィス拡張などに約150 0億円を投じ、在宅勤務ではなく出社を前提とした採用を行なうというものであった。

最近は 、日本の大手企業の多くが緊急事態宣言の解除後も在宅勤務を継続させ、一部では無期限の在宅勤務に踏み切っている企業も出てきている。そのような中での、この真逆の決断はとても印象的だ。

 

昨年、Amazo nやマイクロソフト本社などのアメリカ企業を訪問するツアーに参加する機会があった。アメリカは国土が大きいことから、在宅勤務の取り組みはネットの普及と共に始まっていたようだ。しかし生産性が上がらないことから、多くの成長企業が事務所を大学のように広大にし、レストラン、コンビニ 、運動ジム、託児所 、クリーニングなどを完備させ、全ての生活が会社内で完結できるようにして、在宅から出社勤務へと促しながら、創造性の高い仕事を高いモチベーションで維持できるように取り組んでいる姿を目の当たりにしてきた。

新型コロナウイルス感染症の急激な拡大で、アメリカ全土でも在宅勤務が実施されているが、まだ感染拡大が落ち着いていない状況でありながらも既に出社を前提とした体制に戻り始めている。そんなアメリカ企業に比べて、日本企業は周回遅れの取り組みを行なっているように私は感じる。

 

日本の大企業でさえ、一人ひとりの業務内容や責任が明確でないことが多く、上司と部下の役割や指示系統が曖昧なことも多い。だから会議の時間も長く、日本企業の生産性は欧米に比べて著しく低いと言われている。このような日本企業の悪しき特性が変わることなく在宅勤務に移行することで生産性が格段に低下し、企業が衰退することもあるのではないかと勝手に想像している。

 

上記の無期限の在宅勤務に踏み切るというような「大切な決断がどのように決裁されているのか」というのは、とても興味深く 、決裁について考えることがある。もし現在のような有事の時に役員等の合議制で決断されるようであれば、会社は衰退の道を歩むことになるのではないだろうか。

ファーストリテイリング社の柳井会長の言葉を借りるなら「コロナで10年、歴史が早く回転し始めた」と言われるほど、時代はものすごいスピードで日々変化し続けている。その急激な日々の変化に対して、必要なタイミングで、必要な決裁をし続けるためには、大企業といえどもトップによるトップダウンの決断以外は難しい時代になっている。中小企業であれば 、なおさらだろう。社長が部長や部下に気を遣う、社員の意見を重要視したいと思っている間に時代は変化し、全てが後手に回ることになる。

今こそ 、社長によるトップダウン決裁が求められるタイミングではないかと思っている。