多様な価値観と向き合う

2019年8月31日 at 2:47 PM

<2019年8月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

最近、退職代行サービスを使って退職する若者が増えているという。
この退職代行サービスは、3~5万円ほどを業者に支払い代行を依頼すると即日退職が可能になり、成功率はほぼ100%とのこと。その背景には、社会と若者の価値観のギャップと、転職の求人倍率が高水準の2倍以上で転職が容易になっていることがあると思う。

勝手な想像で、ブラック企業と知らずに就職して辞めたいけどなかなか辞めさせてくれないから、最後の選択肢として退職代行サービスを使って退職しているのだと思っていた。しかし、最近では「仕事自体が自分にあっていない」「上司の要求に応えるのが辛い」「プライベートを大切にしたい」などのいたって普通の理由で退職を決意し、特に会社の待遇や環境に不満はないけど、上司に相談する前に、退職代行サービスを使って最短かつストレスフリーに退職を実現しているようである。

最近の若者の価値観では、「コスパ(コストパフォーマンス)」が重要視されていると聞く。ユニクロでも高いと感じ、コスパの良い服を購入するか、仮に良いものを購入しても何度か着てからメルカリで販売・リサイクルするようである。
さらには、「お金よりも時間が重要」という価値観を「タイパ(タイムパフォーマンス)」と呼び、徹底して無駄な時間を省く傾向もあるようだ。
恋愛は「コスパ」と「タイパ」が悪いため、恋愛を避けたいと思う若者が多くいると言われているほどである。

そんな考えを持つ若者からしてみたら、退職を会社に申し出てから実際に辞めるまでの会社とのやりとりなどは、ほとんど無駄に思えるかもしれない。
もう辞めると決めているので、たとえ引き留められても、気持ちが変わることはないと思うし、上司や周りに気を使ったり、調整に労力を割いたりするくらいなら、決して安くはない金額を払ってでもさっさと辞めた方が合理的である。社会人としてのマナーや礼儀の重要性は理解しているつもりだし、会社に感謝もしているけど、タイパも良く何の悪意も抱いていない。このような感じなのではないだろうか。

ここで、「だから最近の若者は…」と思うかどうかで、企業の未来の生存率は変わると思う。多くの経営者にとって若者の価値観は理解し難いところがあるかもしれないが、そのギャップを少しでも埋める努力はし続けるしかない。そしてその答えは、残念ながら経営者や古参幹部・社員は持ち合わせていないだろう。ヒントとなるものを社内外の若者とお互いに学び合いながら、多様な価値観に柔軟に対応する会社の姿勢が大切なのではないかと思う。

もし、退職代行サービスを使わないにしても、退職を申し出ている社員がいるのであれば同じ価値観や考えを持っているかもしれない。今からでも、その社員と正面から向き合い、価値観を理解する努力を行ない、経営者自ら変わり続けることが未来への道と考える。