経営者のモチベーションの源泉とは

2019年7月31日 at 2:26 PM

<2019年7月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

少し前になるが、日経新聞にパナソニックの津賀一宏社長のインタビュー記事が掲載されていた。
その中で、「現在の危機感はもう200%、深海の深さだ。今のままでは次の100年どころか10年も持たない」という言葉に衝撃を受けた。

7,700億円ほどの最終赤字を出した2012年に就任した津賀社長は、幾重もの大改革を断行しながら再度パナソニックを成長基調に乗せてきた。最新鋭のプラズマパネルの工場を閉鎖し、家電メーカーからBtoBに大きく舵を切った年でもあり、当時のニュースで話題になっていた。その後、2019年3月期の決算では、昨対比20.8%増の増収増益を出している。大改革以降、多くの新しい分野で世界トップクラスの技術と売上を有しながらも、「現在の危機感は20 0%」という津賀社長の感覚は衝撃的であった。

私自身を振り返ると、経営者としてのモチベーションの最大の源泉は『危機感』だと思っている。ただし、経営者としての成長ステージによって、モチベーションの源泉元は変化してきたような気がする。

例えば、アステックペイントを創業した時は、多くの身近な知り合いから無理だから辞めた方が良いと言われていた。だから創業時の私にとっては、そのような方々に対する「今に見ていろ!絶対に成功させてやる」という『反骨精神』もモチベーションの源泉であった。
そして、会社が多少軌道に乗り、ある程度黒字が出始めて、社員を何名か採用し始めた頃は、美味しいものが食べられる、大きいマンションに住める、速い車に乗れるという『サラリーマン時代にできなかった生活レベルを実現できること』がモチベーションの大きな源泉になっていたことも間違いない。しかし、そのようなモチベーションはすぐに飽き始め、『お客様と社員の喜びや幸せを見られること』がモチベーションの源泉だった時期もあった。

それから、ある程度組織の規模も大きくなり、顧客、取引業者、社員等との関わりの中で組織を存続させていくことによる社会的責任という意識が出始めると、『危機感』が最大のモチベーションの源泉となってきた。私自身のひとつの経営判断ミスが、多くの取引先や社員、その家族の生活まで影響することを考えると、経営者としての責任の重さを感じるようになった。

現時点での私にとっての最大の危機感は「組織の成長」に対してだと思っている。もちろん組織の存続は大切であるが、組織の成長が停滞すれば、衰退の始まりでもあり、長期的に見て結局は淘汰される流れになる。
短期でも成長が止まるだけで、お金の流れは停滞し投資や教育は削減され、社員のやる気も失われ、給与が思うように上昇しなくなる中で組織は崩れ始めてくるというイメージを持っている。だから、「組織の成長」に対する危機感は強く持っており、その危機感が私の最大のモチベーションの源泉になっている。

願わくは、未来永劫の組織の成長を実現させ、短期的にも長期的にも関わる方々の幸せを実現できる組織を作っていきたい。