塗装職人が望む、働き方改革とは

2019年3月29日 at 10:45 AM

<2019年3月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

「働き方改革関連法」が、日本社会に大きなインパクトをもたらすことは間違いない。
特に、時間外労働の罰則付き上限規制は、常態化された残業によって残業代を得て、生活費の一部として不可欠になっている多くの方々にとっては深刻な問題となるであろう。日本全体では約4~5兆円ほどの実質的な賃金削減となり、日本経済に大きなダメージとなるはずである。

働き方改革によって働き方やライフスタイルが大きく変わろうとしているなか、塗装職人はどのようなライフタイルを本当は望んでいるのか真剣に考えるタイミングにきていると思う。
多くの若者にとっては、日本政府が促進している働き方改革に共感しているかもしれない。有給が取りたくても取りづらい雰囲気があったり、残業代をもらうより早く帰宅して趣味の時間が欲しいというような若者も多いであろう。

しかし、職人はどうであろうか。私は職人出身ではないので、お前に何がわかるのかと言われてしまうかもしれないが、一般的なホワイトカラー人材と職人では価値観や求めていることは大きく異なっていると思う。職人が、それぞれ様々なバックグラウンドはありながらも、3Kと言われる仕事を、プライドをもって続けられているのは、「しっかり稼いでいる」からではないだろうか。とすると、職人は、週休二日で残業が少なくなった結果、給与が減るより、“週末もガンガン仕事をして、休みは少なくてもいいから、より多く稼ぎたい”というニーズの方が強いのではないかと思う。

職人のそういったニーズを考えないまま、社会の流れにのって働き方改革を進めてしまうと、職人との距離が開き、モチベーションが低く要求ばかりが多い職人だけが会社に残ることになってしまうだろう。もちろん、法令遵守が第一であることは間違いないが、あわせて、職人の価値観を理解し、職人の求めることに応えるような働き方を提供できるのであれば、たとえグレーゾーンであっても、そのような道を見つけ出すしか無いと思う。

職人にしっかり稼いでもらうためには、より多くの時間働いてもらう。これは会社と双方にとってメリットがある。それでは、職人の給与を上げる、もしくは単価を上げるとなると、会社の利益は減るので、双方にとってメリットがあるわけではない。そこで、私は多能工化が絶対に有効だと思っている。自社職人や協力業者の塗装職人が、シール・防水・板金などの技術を身につけ、それらの工事を手がけられるようになれば、その分、支払う給与の総額を増やすことができるはずだ。外注先に出すよりも安いのであれば、双方にとってメリットがあるであろう。

特に住宅塗装のように規模が小さい現場において、外注を入れながら分業をするメリットは少なく、多能工化で同じ職人が全てできるようにした方が、段取り、時間、人工などあらゆるものが理屈上は減るはずである。且つ、雨の日も仕事ができる幅も増え、職人もより稼げるようになるはずである。

働き方改革というマンモス級のインパクトが日本社会を襲うのであれば、我々の既成概念を超えたところの取り組みがあっても良いと思う。