経営者は黒字に逃げてはいけない

2018年4月27日 at 6:51 PM

<2018年4月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

ネットニュースを見ていて、「経営者は黒字に逃げてはいけない」という見出しに目がとまった。ハーバード・ビジネス・レビューの有料会員だけが見られる記事であったため、まだ読めていないが、見出しだけでも、なぜかジーンとくるものがあった。サイバーエージェントの藤田社長のインタビュー記事とのことで、自分なりにその内容を想像してみた。

現在、サイバーエージェントが運営するインターネットTV局「AbemaTV(アベマTV)」は年間200億円の赤字を出しているが、藤田社長は変わらずAbemaTVに全力を注いでいる。藤田社長は、伸びない分野には早く見切りをつけ、伸びる分野に経営資源を集中させているようだ。過去の実績に信用があるとは言え、継続的に続く赤字に多くの投資家は不安を感じているに違いない。そんな中、ブレずに突き進んでいる藤田社長から出てきた言葉が「経営者は黒字に逃げてはいけない」であったのだろうと想像する。

この言葉に感動せずにはいられない。次世代に活躍する企業に必要な考え方だと思う。
これまでは、経費をコントロールしながら黒字をしっかり出し、自己資本比率を可能な限り高め、どのような状況に陥っても耐えられる強い企業経営が尊敬されてきた。しかし、日本の大手企業の多くは膨大な現預金を抱えながらも、新たな未来投資を怠り、その結果、世界の競争相手に遅れをとってしまい、少しずつ衰退しているように感じる。つまるところ、これからの時代は、未来投資よりも、しっかり黒字を出して現預金を貯め込み続けることを優先する方がリスクになり、次の時代に向けて競争力を高めるために未来投資をし続けることのできる企業が成長できる、ということであろう。

こうした考え方をもとにすると、「経営者は黒字に逃げてはいけない」という表現通り、今、業績が伸びているからといって黒字を出すことに逃げるのではなく、業績が伸びている中で生まれる利益を、いち早く未来投資に向けることが経営者としての正しい姿ということになる。

例えばAmazonの場合、どんなに長い期間赤字であっても投資家が投資し続けるため事業の継続が可能であり、その結果として、現在は膨大な利益と共に小売業界のプラットフォームを握りつつある。だが、Amazonが特別だからと、別枠で考えるべきではないだろう。
“黒字に逃げず、未来に投資すること”は、これからの時代、どの企業にとっても必要な考え方だと思う。