外国人労働者の活用について考える

2018年2月28日 at 2:24 PM

<2018年2月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

タイの建設現場を支えているのは、外国人労働者であることはよく知られているが、昨年、タイ政府が取締りを強化し、多くの不法就労者が帰国したことで、建設業界や小売業界では倒産の危機に陥った企業も少なくなかったようだ。
タイでは、少子高齢化によって労働人口が減少しており、また、日本と同じように多くの労働者が3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれる仕事には就きたがらないため、隣国のミャンマー、ラオス、カンボジアから大量の労働者を受け入れている。その数は、不法就労者も含めミャンマー人400万人、カンボジア人120万人、ラオス人60万人と言われ、計600万人近い外国人労働者を受け入れていることになる。タイの労働人口が3800万人と考えると、労働人口の約15%が外国人労働者ということになる。

失業率が1%前後のタイにおいて、タイの労働人口だけであらゆる産業を成長させ続けていくことは不可能であろう。とすると、今後は国をあげて外国人労働者の受け入れ体制を整備し、国民や地域社会が外国人労働者を支援しながら共存できる社会をつくっていくのだと思う。歴史的背景から考えると、東南アジアでは、中国人も含めた人口の大移動や国境の変動もあったため、外国人労働者を受け入れやすい基盤もあるのかもしれない。

日本で働く外国人労働者の状況は、タイに近づきつつある。都内にあるコンビニのアルバイトは多くが外国人であり、一部の産業では外国人無しでは経営が成り立たなくなってきているのではないだろうか。日本では外国人労働者の受け入れに厳しく門戸を閉ざしているが、数字を見ると、68万人(2012年)から128万人(2017年)と外国人労働者の数は大幅に増えている。そして、そのほとんどが、勉強をしに来ている留学生、実務の研修を受けている技能実習生である。留学生や実習生というのは名ばかりで、外国人労働者として日本の産業の一部を支えているというのが実際のところのようだ。

今後、欧米並みに労働生産性を上げる努力をするとともに、AI、IT、ロボットをもっと活用することで、労働力不足の一部は解決できるかもしれない。また、人手が足りない産業の給与を上げることができれば、他の産業の余剰人材を移行させながら、国民全体の給与をヨーロッパ並に引き上げることもできるだろう。そして、人を採用するより、ロボットを使ったほうが割安となれば、AIやロボットの開発も進むに違いない。

とはいえ、“現状の建設業界の給与を大幅に上げる”“必要なロボットを次々と開発する”といったことには時間がかかるため、現状は、外国人労働者の活用と社会での共存という選択肢も検討せざるを得ないだろう。