賃金の対価について考える

2017年10月23日 at 7:09 PM

<2017年10月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

 トヨタ自動車は入社10年目以降の社員を対象に、実際の残業時間に関係なく、
 毎月17万円を残業手当として一律に支給する制度を導入することを決めました。
 これは、主任職の平均で残業手当45時間分にあたり、残業を少なくすればする
 ほどメリットがある仕組みです。残業が45時間を超えた場合、手当は上乗せされます。

先日、トヨタ自動車が残業代保証新制度を導入するという上記ニュースが出ていた。
毎月一律17万円という残業手当の金額にまず驚いたが、この制度導入の根底には、実際に発生しているであろう残業時間分の手当ては最初から出すから、時間という概念ではなく、成果に対する対価としての賃金という考えを持って働いてほしいという意味があるのであろう。実際に働く時間が45時間を下回っても17万円を出すということは、そういうことだと思う。
日本では、賃金とは労働時間に対する対価という考えが未だに強いが、私は、成果に対する対価を支払うというトヨタ自動車の制度は素晴らしいと思う。そして、この制度は、もしかすると、日本のホワイトカラーの生産性が先進国の中で突出して低い現状を改善していくための取り組みの一つなのかもしれないとも感じている。
現在、日本の物価や賃金は、先進国の中ではかなり低い。ヨーロッパやアメリカ、シンガポール、オーストラリア等に行くと、日本の物価は非常に安いと感じるし、賃金も極めて低く抑えられている。賃金の低さについては、日本の実質賃金が過去20年ほとんど変わっていないという事実が物語っているし、ワーキングプアという言葉が生まれる程である。

しかし、ここにきて転換期を迎えているような気がしている。今後、賃金は上昇する方向になってきていると思う。過去最高の失業率の低さや、求人倍率の高さも、その片鱗の一つなのではないだろうか。そして、今後、一部の勝ち組と大多数の負け組にはっきり分かれる格差社会に突入していくと、勝ち組がほしがる人材には、世界基準の高い賃金が支払われるようになるため、内需産業といえども、一部の勝ち組がほしがる人材の賃金はさらに大幅に伸びていくことになると思う。
我々の塗装業界でも、このような考え方をいち早く持ち、他社より先手で取り組みを行なっていかなければ、今後、良い人材を獲得することはできなくなるであろう。良い人材が獲得できないということは、会社の成長が止まることと同義である。

良い人材を獲得するためには、収益をしっかり出し、魅力のある会社にしなければならない。そのためにやるべきことは沢山あるが、これからの時代を生き抜くために他に選択肢があるとも思えない。