小説『海賊とよばれた男』に学ぶ

2017年8月25日 at 10:54 AM

<2017年8月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋>

普段はビジネス書を中心に読んでいるが、長期休暇時には長編小説を読むようにしている。
好きな小説に出会うと、夜寝るのも忘れるくらい夢中になってしまい、読むのをやめられなくなってしまうため、小説は長期休暇の時に読むと決めている。

今回のお盆休みでは、読みたいのをずっと我慢していた、出光興産の実話をもとにした小説『海賊とよばれた男』を読んだ。将来、油(石油)が経済の中心になることを予見し、戦前に会社を立ち上げアジア全体に事業展開するも、終戦で全てを失い、終戦後に再び石油ビジネスに挑戦し、業界を牛耳る国際カルテルと戦いながら大きく成長していくといった話である。

感動の連続であった!
歴史好きな私は、第一次世界大戦から第二次世界大戦の背景などはこれまで色々な歴史書で勉強してきたが、『海賊とよばれた男』に描かれる石油ビジネスを通して、また違った視点で戦争の経緯や経済の動きを知ることができ、歴史の断片的な知識が繋がっていく感覚、とても楽しかった。

日本が太平洋戦争に突っ込んでいったのは、アメリカに石油を禁輸されたことが最大の理由であったことは様々な歴史書でも言われているが、実際に中国から東南アジアの隅々にまで石油を販売していた出光興産の実話をもとに歴史の一部を紐解くことができたことに、大変感動した。

二番目の感動は、出光興産の創業者である出光佐三さんの経営姿勢である。
経営者としての器や信念、未来を見る力、社員との信頼関係などには、考えさせられることが多々あり、自分自身の足りないところ、目指すところが見えてきたのも大きな収穫であった。

三番目の感動は、出光佐三さんが生産者から消費者に直接届けることで、中間搾取なく、良いものをより安く提供したいという強い信念を持っていたことである。問屋を通さないことで、人手が多く必要となり、非効率で、利潤も上げにくい。だが、信念として中間搾取のない商売をやりたいと会社を立ち上げ、生涯貫いている。
アステックペイントジャパンでも、問屋を通さない直販体制を信念として守り続けてきた。
塗料業界では当社が唯一の会社であろう。出光佐三さんの足下にも及ばないが、会社創業時の信念に共通点があったのはかなり嬉しかった。

戦後の日本経済の立役者の一人である出光佐三さんと、規模や器は違えど共通点が多々あり、出光佐三さんが石油業界や日本社会で実現しようとしていたことを、私も塗料業界で実現したいと、多くの勇気と元気をいただいた。